第19号
1997年
8月
文:向井 裕子、WP:向井 裕子
向井 宏
暑中お見舞い申し上げます
この夏は、8月になる前に3つも台風が上陸し、蒸し暑かったり涼しかったりの
なんだか「ピカッ」としない夏ですが、皆様くれぐれも体調に気をつけられて
楽しい夏をお過ごし下さい。
「夏祭り」
7月19日はピカーッと夏らしい一日でした。この日、保育所の夏祭りが行われました。朝から暑くて、私は内心「天気が良すぎて困ったなぁ。」と思っていました。体温調節のうまくできない望は、気温の上昇とともに体温も上がり、夏は平熱が38度くらいになっていました。春から秋までアイスノンは必需品です。春や秋の遠足にまでアイスノンを持参するくらいですから、夏の外出には気を使います。保育所でも友達と外で遊びながら、時々、室内に入って水分補給をしたり、木陰に入って遊んだり、どろんこ遊びの時は水でぬらした帽子をかぶせてもらったりしています。「今日のこの暑さの中、外での行事に望が耐えられるのだろうか。」と私は心配でした。
夏祭り前半(午前中)は、子ども達だけで、各クラスでお店を出します。お店屋さんやお客さんになって遊びます。地域との交流の行事にもなっていて、近くの小さな子ども達が母親に連れられて遊びに来ます。私は、友人が保育所の見学がてらに子どもを連れて夏祭りに参加するのにおともして、望の様子を見てきました。望のいるすみれ組は玉入れと輪投げを組み合わせたようなゲームのお店を出していました。望はスタビライザーに入れてもらい、右腕に鐘を付けてもらって、お店番をしていました。「望ちゃん、入ったらカランカランってするんだよ。」TくんとNちゃんが同じ鐘を持って望に教えています。望にもちゃんと店番ができているようでした。
(お店番)
給食を食べた後はいつものように昼寝をして、おやつを食べ、午後3時から夏祭りの後半が始まることになっていました。後半は保護者も参加して、盛大に行われます。私は保護者会の店の準備で、午後1時頃再び保育所に行きました。すみれ組の部屋の前で作業していると望の大きな声が聞こえてきました。興奮して起きている様子です。午前中の疲れに負けてようやく眠った望は、部屋のカーテンが開けられ友達がおやつを食べだしても起きず、保母さんが気遣ってそのまま少し寝させて下さいました。おやつの後、子ども達ははっぴを着てまめ絞りをしめ、保母さん達もたすきをかけて、おみこしの練り歩きが始まります。はっぴを着せられるのがいやで望は大泣きをし、頭を振ってまめ絞りを落とそうとしていましたが、理解をしたのか、あきらめたのか、身支度が整うとおとなしくしていました。おみこしの練り歩きは子ども達の作ったおみこしを持って保育所の外周を回ります。すみれ組はかつぐのではなく、引っ張るおみこしです。望の乗ったおみこしを皆が引っ張ってくれるのです。望はおみこしの中にスタビライザーで立位になり、まじめな顔をして乗っていました。ワッショイ!ワッショイ!威勢のいい掛け声でお祭り気分が盛り上がります。ボランティアの方々も「保育所での望」を見にいらして喜んで下さいました。おみこしの後は、保護者の出している店を回って遊びます。私が店番の時は、望は保母さんやボランティアさんに抱かれ、あっちの店、こっちの店と行ってはゲームを楽しんでいました。久しぶりに望と遊ぶボランティアさん方に保護者役を任せて一番楽をしていたのは夫でした。午後4時を過ぎると望は少し眠くなってきました。でもそこで、保母さん達の色っぽい盆踊りがあって驚いた(?)のか復活し、その後の盆踊りは楽しそうに参加していました。
(おみこしに乗る望)
とても楽しい夏祭りでした。望は大活躍でした。そして、望は元気でした。アイスノンを使うこともなく、時々、部屋に入って水分補給をした位で、体もさほど熱くなりませんでした。(クーラーのきいた部屋に作られたワクワクランドでしばらく遊んだりしましたが。)翌20日も元気でした。21日には、39度以上の熱を出しましたが、一日で下がりました。夏祭りとその翌日はハイになっていて、元気だったのかもしれません。一日おいて疲れが出たのでしょうか。それから後、鼻と咳が出て、風邪をひいていますが、「食欲」と「外に行きたい欲」は相変わらず旺盛です。「望は強くなった。」と私はつくづくと思いました。一つ夏を越すごとに、望は強くなっていくようです。他の子どもに比べれば、まだまだ暑さは苦手ではありますが、ハラハラ、ドキドキ、オロオロの夏は、どこかに行ってしまったかのようです。本当にこの夏はどんなおてんばぶりを見せてくれるのかと楽しみです。
ひとこと
7月14日は、プール開きがありました。雨で延び延びになっていましたが、やっといい天気になって待ちに待ったプールです。お友達と一緒にプールの中でワニ歩きやザリガニ歩きをして遊んでいるようです。(保母さん、腰を痛めないようにしてくださいね。)でも、7月下旬から体調を崩して、プールはしばらくおあずけです。8月はたくさんプールに入れますように。
7月25日、初めて保育所から「熱が出ました。」と電話がありました。保育所の方々にはご迷惑やご心配をおかけしましたが、入所して4ヶ月間、呼び出しがなかったと、改めて望はよくがんばったなあと感心しました。28日からは、縦割り保育(3、4、5才児が一緒のグループになってする保育)が始まりました。いつもと違う友達の中で、お兄ちゃんお姉ちゃんの中で、どんな表情を見せてくれるのか楽しみです。
7月29日のことです。私は望に「これ食べたらお外に行くよ。」と話しかけ、そして、なにげなく「お外はどっち?」と尋ねました。尋ねてから、お外は解ってもどっちは解らないかと思ったと同時でした。望は左の方を向き、右手で左の方を指したのです。左側は玄関でした。静かな会話でした。今まで単語での問いかけに時々は右手を上げて答えてくれていましたが、(気のせいかもしれませんが)初めての会話らしい会話でした。忘れられない出来事になりそうです。
のんちゃん便りのホームページを開設しました。http://www.sannet.ne.jp/userpage/hmukaiです。内容はのんちゃん便りそのままの味も素っ気もないものですが、より多くの人に望を知ってもらえることになります。のんちゃん便りの読者の方で「今後、紙はいらない。」という方は、お手数ですがご連絡下さいませ。ホームページも見るけど通信も欲しいという方は今まで通りお渡しします。
のんちゃん便り第10号(1996年11月)に登場の西原由美さんが本を出しました。西原海くん、7才。海君は、院内保育所での事故により超重度障害児となりましたが、暖かな家族に囲まれて自宅で生活しています。障害児と家族の6年を綴ったものです。
「海君が笑った。」かもがわ出版1680円。