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のんちゃん 便り

第111号 2005年 8月

初ヨットレースは・・・

今年の初めから、アクセスディンギーというヨットに乗り始めた望ですが、7月18日に大会にでました。1人乗りでのエントリーです。望は、ジョイスティックひとつで、舵と帆が操作できる電動のアクセスディンギーに乗っています。春に乗った時はいつも、風が弱く、海も穏やかで、もの足りない感じでしたが、望にとっては快適な航海のようでした。でも、大会の日は、風も波もあり、今までとは違いました。

望の苦手な暑さの中、朝からの長い待ち時間。お腹も減り、機嫌が悪く、コンディションの良くない状態でのスタートになりました。その上、ジョイスティックが、いい位置に取り付けられず、モタモタしているうちにスタート時刻が近づいてきました。ようやく海に出たものの、望にとっては初めての強い風で、思うようにディンギーが進みません。望は、海の上で腕をバタバタして怒っていました。他のディンギーがスタートしても、望はスタート位置に行くこともできず、スタートできずにこのまま終わるのかと思われました。ボランティアの方々が、練習の時のように、小さなレスキュー船を出して、「こっちこっち」と導いてくださり、ようやくスタートできました。

レースは、海の上に浮かべた「浮き」を回っていく難しいコースでした。スタートから直進して最初のコーナーまで行ったところで、波しぶきがかかりだし、望は、またまた怒りだし、ボランティアの方々が、これ以上やらせてディンギーを嫌いになってはいけないと、ロープで引っ張って帰ってきてくださいました。途中棄権です。無謀なチャレンジは、あえなく終わりました。でも、スタートして少しでも進んで、初めてにしては上出来です。

レースの出場者は、障害の有無に関係ありません。望だけをエントリーしたつもりが、私たち夫婦もエントリーされていました。2人乗りの組で出場しました。望に、私たちも乗るのを見せた方がいいと言われて、これも経験とばかりに出場しました。それを見た望は、ボランティアの方々に向かって、レスキュー船を出せと「指示」して、周りを笑わせました。自分が乗る時に出るレスキューは、当然、お父さんお母さんが乗る時にも出ると思ったのでしょう。望のさまざまなことへの理解の仕方が、本当に面白いと感じます。

実際にディンギーに乗ってみると、コースを示す「浮き」が見え難く、望の視力では多分見えないだろうと思われました。また、風の向きで、舵をきりながら帆を張ったり緩めたりするのが、本当に難しかったです。改めて、望がディンギーを操るのは、まだまだ長い道のりと思いました。初めてのレースは、途中棄権に終わりましたが、望は真っ黒に日焼けをして、ちょっとたくましく見えました。楽しみながら、気長にいこうと思います。

青森へ

先天性四肢障害児父母の会の総会が、今年は青森の三沢で開催されました。初めての東北なので、総会だけで帰るのはもったいないと、総会が終わった日も1泊してのんびりすることにしました。2泊3日のこの旅行は、「バリアフリー調査」のようでした。

総会の申し込みをしたものの、夫も私も忙しくて、旅行内容を見ていませんでした。事務局の方が「ホテルはバリアフリーです」と連絡を下さり、ふと、空港からホテルまではどうやって行くのだろうと調べると、シャトルバスと路線バスしかありません。事務局に調べていただくと、「車椅子でバスに乗る人はいない」らしく、リフト付きのバスがありませんでした。結局、ホテルの大きな車で送迎してもらうことになりました。

出発の朝、空港に行くと、望の電動車椅子のバッテリーがウェットかドライかと聞かれました。事前に航空会社に電動車椅子だと伝え、確認していたにも関わらず、です。ウェット?ドライ?それなに?と困っているうちに、ウェットだということになり、バッテリーは車椅子から外され、危険物扱いになってしまいました。はずされたバッテリーは、大きなBOXに入れられ、注意ラベルが貼られました。ちなみに帰宅後、車椅子の業者さんに問い合わせると、望のバッテリーは、シールドタイプのもので、そのまま飛行機に乗れると言われました。次に飛行機に乗る時は、ちゃんと伝えようと思います。

三沢は、心地よい気候でした。望は、夕方の子ども交流会で、ピアノを弾き、お友達とリコーダーを演奏し、その後の大人の交流会にも参加しました。翌日の総会の間、子ども達は、航空科学館に見学に行きました。この時も、ホテルの車を出していただいたので、私も一緒に行きました。でも、望はみんなと一緒にバスに乗りたかったようで、「バス、バス」と訴えていました。科学館では、ボランティアのお兄さんと楽しく過ごしました。作業療法士になる勉強をしている学生さんでした。手足も言葉もない望に戸惑ったでしょうが、一生懸命、望の視線で話しかけ、望の「したい」「いや」を聞き取ろうとしてくれて、そのようすがとてもほほえましく思えました。帰りは、望は、学生さんに抱っこしてもらってバスに乗り、私は電動車椅子とともに車でホテルに帰りました。望は、ご機嫌でバスから降りてきました。

お昼に総会が終わり、夫がいきなり、青森までJRで行こうと言い出しました。いつもこんな調子です。望の導尿をして、ホテルを出発しました。夫がみどりの窓口の行列に並びました。先に車椅子の対応をしておいてもらおうと、駅員さんに「青森まで行きたいのですが、車椅子です」と伝えました。すると、「お名前は?」と聞かれました。「何で名前を聞くのだろう」と不思議に思いつつ、問われるまま答えると、「車椅子は、電話予約をしなければいけません」「ココでは、車椅子の乗客はほとんどいないので、車両に乗るためのスロープは倉庫にあります。車両の入り口に段差があるので、スロープがないと乗れません」と言われました。

それでも、地方の優しい駅員さん達です。すぐにスロープを出してきてくれました。駅構内にはエレベータがあり、無事に乗ることができました。ホームで一緒になった先輩のご夫婦と向かい合わせの席に座り、車中で弁当を買って、なんだか懐かしい汽車の旅でした。青森では、ねぶた祭りが近づいていて、作成中のねぶたが並んでいるところがあると聞き、見に行きました。ずらっと並んだテントの中に、勇壮なねぶたがありました。望は、怖くて近づくことができません。大急ぎで通り抜けようとします。写真も撮らせてくれません。説得して何とか写真を撮りました。

3日目は、ホテルの広い敷地内でのんびりとして帰ってきました。出かけていくことの大切さを改めて感じる旅でした。



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