のんちゃん 便り
第130号 2007年 8・9月
夏はお祭り
「小学校の時は良かった。学校のいきいき教室に長期休暇中も毎日通えたもの」と思って過ごした昨年の夏休み。今年の夏もそれは同じですが、困る暇もないくらい、バタバタと過ぎていきました。望の体験を広げるために、大好きなお祭りを堪能させようとか、暗い所が大嫌いな望を映画に連れて行こうかとか、音楽が好きなので演奏会やコンサートに行こうとか考えていました。
まずは、映画。中学生ですからお母さんと一緒に映画に行くのもつまらないだろうと、友だちと行くことにしました。ヘルパーに同行してもらいました。望が「出る~」と訴えた時に、映画館に友達1人残して出るわけにはいきませんから、友だち2人とヘルパーと4人で行ってきました。望はマンガよりもドラマの方が好きなので、西遊記がいいかなとか、人込みを避けて行きやすい映画館がいいかなとか、色々考え調べたのですが、結局、一緒に行く友達がどこどこの映画館で何時からこの映画があると調べていました。梅田にある映画館に「ピアノの森」を観に行きました。そうですよね、中学生にもなってと思いながら、親があれこれ計画しようなんて矛盾していました。私とヘルパーがしたことは、車椅子席があるかどうかの問合せと導尿場所の確認だけでした。望は怖がってなかなか映画館に入ろうとしなかったようですが、一緒に行った友達やヘルパーが知らん振りして入って行くので仕方なく入ったようです。でも、上映中はすばらしいピアノ演奏があったからか、見入っていたようでした。友達と一緒に電車で行ったことや、ロビーでおやつを買ったのも良かったのでしょう。望の映画初体験は大成功でした。私へのお土産は食べ残しのポップコーンでした。
それから、コンサートに行こうと、望がテレビで熱中して見ていたユーミンのシャングリラに問合せをしました。しかし、既に車椅子席は満席だと言われました。全席S席なのですが、車椅子席が後ろの片隅に少しだけA席として作られていました。直前だったので、S席の発売しかしていないとのこと。望は小さいので、会場入り口に車椅子を置いて、抱っこで見ることも可能かと思い聞きましたが、抱っこは2歳以下の子どもと決まっているので、特例は認めないと言われ、S席の料金でA席に詰めて入れることは可能と言われました。A席は満席と言われたのに?コンサートはまたの機会に行きます。
8月4日5日は、毎年行っている先天性四肢障害児父母の会の全国総会に行きました。今年は岡山の倉敷でした。総会中は他の子ども達と一緒に科学館に行きましたが、望はプラネタリウムが嫌で、ボランティアと会場をウロウロして自動販売機で缶コーヒーを買って飲み、会場探検で終わりました。総会から帰って翌日は、平和登校日。平和授業のあと、プールにクラブと疲れも極致で体力を消耗したのか、その2日後に尿路感染を起こしました。6、7年ぶりくらいの感染でしょうか。最近は風邪をひくことも少ないので、久々の抗生剤がよく効いてすぐに完治しました。
この夏の大イベントは「阿波踊り」でした。2泊3日の久々の家族旅行です。8月14日の朝、車で出発をして瀬戸大橋を渡り高松に行きました。「たらいうどん」を食べて、その夜は高松泊まりだったので、高松祭りを見に行きました。公園ステージでの踊りは面白かったようですが、大通りでの踊りは、「かぶりもの」がたくさんいて、かぶりものが苦手な望は早く帰ろうと一目散に電動車椅子を走らせました。
翌朝、すぐに徳島に向けて出発する予定だったのですが、「デンシャ!」と望が訴えるので、琴電に乗せることにしました。夫は車で、私と望は電車に乗って、終点の志度で合流。のどかな風景を眺めながら、のんびり電車の小さな旅をしました。鳴門では、望はお父さんと観潮船に乗りました。船酔いしやすい私は陸で待機。その後、「渦の道」に行きました。ここでは、所々足元に透明な板があり、鳴門の渦潮を真下に見下ろすことができます。望は電動車椅子の下に渦が見えるのが面白かったようで何度も見ていました。昼過ぎにホテルに入り、徳島在住の四肢障害をもつ小学生のお子さんとご家族に久しぶりにお会いしました。前に会ったのは赤ちゃんの時でした。大きくなって、本当に嬉しかったです。夕方、徳島駅近くで早い夕食を取り、徳島市役所へ。市役所前の広場では、観光客に阿波踊りを教えてくれ、「にわか連」が結成されて大通りに踊りに行きます。望は電動車椅子を運転すると右腕がふさがるので、踊ることができないのですが、それでも踊っている気持ちいっぱいのようで楽しそうでした。夜8時半からは、有料の観覧席で有名連の踊りを見ました。でも、望は観覧席でもずっと「踊りに行く」と訴えていました。車椅子席はかぶりつき状態でした。10席中2席しか埋っておらず、大勢の踊り手にこちらが見られているような感じでした。現に小さな踊り手は、観覧席の望を見てビックリして踊りが止まったりして、どちらが見られているんだかとおかしかったです。踊る阿呆に観る阿呆、望はやっぱり踊る阿呆になりたかったようでした。
翌日は、高知まで車を走らせ、私の高校時代の同級生に会ってきました。お互いにちっとも変わらず(そんなはずは無い!)、懐かしくて昔にかえったようでした。友達と別れ、坂本竜馬館を見学して、桂浜に行きました。3県を回った慌しい旅行でしたが、楽しさ満点でした。望は、テレビに阿波踊りが映るたびに「あ~!(阿波踊りだよ)」と知らせて、手を挙げて踊っています。やはり阿波踊りを踊ったのが1番楽しかったようです。
8月25日には、クラスメイトの入っている吹奏楽団の演奏を聴きに行きました。会場は暗かったのですが、子ども向けのイベントで子どもがたくさんいたからか、あまり怖がることもなく、演奏が始まると友だちを見つけたのか、一生懸命に見て(聴いて)いました。演奏後、花束を渡して、一緒に帰りました。
8月26日27日は毎年参加している豊中の「考える会」のバス旅行で、蒲郡に行きました。バスの好きな望は大はしゃぎでした。七夕のように年に一回だけ会う方もあります。お天気も良く、今年も楽しいバス旅行でした。
その他は、ヘルパーさんと電車で出かけたり、母といろんな科に定期通院したり、お父さんと盆踊りに行ったりして過ごしました。大量の宿題も夏休み最終日まで頑張りました。
学校が始まってすぐに、近くの氏神さんの秋祭りがありました。望はクラスメイト数名と担任の先生と学校で待ち合わせ、一緒にお祭りを楽しんできました。望はお祭りを堪能して満足な夏でした。私は山のように溜まった仕事に頭を抱えています。