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のんちゃん 便り

第145号 2009年 8月

盛りだくさんの夏

6月下旬に障害者自立支援法の重度訪問介護のサービスを受けることが決まり、望はヘルパーと過ごす時間が増えました。重度訪問介護は、基本は18歳以上のサービスですが、15歳以上の申請が可能です。様々な機関や委員会で検討され承認されてようやく利用できます。申請から決定まで2ヵ月かかりました。4月からのヘルパー利用料の多くは自費でしたから大きな出費でした。障害者自立支援法は自立を支援できるような内容ではありませんが、とにもかくにも、望は自立に向けて本格的にサービス利用を始めました。

気温とともに体温が上がり平熱が38度になる望の苦手な夏ですが、暑さなんてなんのその、元気に過ごしています。高校が夏休みになっても、昼間の生活は作業所で作業をしたりいろんな人と関わったりと大きく変わることはありません。それに加えて、夏休みならではの体験をたくさんしています。

7月18日には、劇団四季のミュージカル「ソング&ダンス55ステップス」を観に行きました。以前から、ミュージカルやコンサートに連れて行ってやりたいと思いながら、なかなか行けずにいました。この夏こそ!と思い行って来ました。実は、私が是非行きたいと思ったのですが(苦笑)。ストーリーがあるわけではなく、歌と踊りが中心の公演。きっと望も喜ぶと思いました。チケット予約の対応はとても良くて、当日も、受付から、トイレ、劇場への案内も丁寧で、望は自分がちゃんとお客として扱われていると感じたのか、苦手な暗い劇場の中へも抵抗無く入りました。次から次と繰り広げられる歌と踊りに熱中し、右腕だけではなく、腕の無い左肩でもリズムを取っていました。休憩時間は、ちゃっかりとアイスティーを飲んで、ホールで上映されている他の公演作品の映像を食い入るように見ていました。役者挨拶では、客席に降りてきたイケメンの男優さんに握手してもらい満足げでした。私も久々に、これぞショー!という舞台に贅沢な時間を過ごしました。

7月20日からは、劇団態変の秋の公演の稽古が始まり、毎週日曜日に行っています。今回もエキストラでの出演ですが、いつもより出番が多くて稽古も厳しいのです。たくさん這って右腕の先を擦りむいても演じ続けます。痛くても、暑くても、やりたいことはやるのだ!という強い意志が伝わってきます。腕の傷は1週間で治ってはまた擦りむくを繰り返して、親のほうがヒヤヒヤしています。高校生になったので、私が付いてではなく、ヘルパーと稽古に行くようになりました。

7月21日から毎週火曜日、障害のある中高生を対象としたピア・サマー・スクールにヘルパーと行き始めました。顔合わせ交流に始まって、花火とバーベキューをするための話し合い、買出し、バーベキュー&花火大会と、夏休みの終わりまで5回にわたり開催されます。『花火をする!』とゼスチャーをして最終日を楽しみにしています。

7月25日の天神祭りでは、花火のよく見える障害者自立生活支援センターの事務所に行って、中学の時の友達と一緒に花火を見てきました。マンション住まいの我が家からは、いろんなところの花火が見えるのですが、遠くて望にちゃんと見えているかどうかと思っていました。小さな頃に花火の打ち上げ会場まで連れて行ったことがありますが、音が大きすぎ、人が多すぎ、疲れただけで終わりました。でも、今回は、目の前に大きな花火が上がるのがよく見えて、しっかりと楽しむことができました。自分から浴衣を着ると言って浴衣を着てうれしそうでした。

8月10日には我が家で、中学の時の友達や障害者自立生活支援センターの方々を招いて、たこ焼パーティーをしました。大阪出身ではない私は焼き方もわからないし、たこ焼機も持っていないのですが、自立生活支援センターの方にたこ焼き機を持参してもらい、望の友達に作ってもらい、お客さんにお任せのパーティーになりました。望は、天神祭りの花火もたこ焼パーティーも中学の時の友達と会って、うれしそうでした。この関係がずっと続いて欲しいなあと思いました。

8月1日2日は京都に行きました。先天性四肢障害児父母の会の全国総会が開催され、その1泊2日の間、望は総会会場でヘルパーと大学生ボランティアと過ごしました。夜も一緒に寝て、親がいなくても全く平気な望でした。2日の子どもレクリエーションでは、太秦映画村に行き、生まれて初めてのお化け屋敷体験。屋敷内で望を抱っこしてくださった小さな子どもさんのお父さんが、望の心臓がバクバクいっていたと言われたそうです。8月23日24日には、豊中の方々が主催のバス旅行で、滋賀県長浜まで行ってきました。

また、夏休み中に、高校のクラブ活動にも参加しています。いつもは、授業終了後の21時から始まり22時頃まであるクラブ活動なので、参加したいと思ってはいたのですが、望と付き添う私との体力を考えるとなかなか難しかったのです。でも、高校は単位制で、クラスでの活動が多くはなく、体育祭も練習があるわけではなくて、ぶっつけ本番の体育祭でしたから、高校で友達との関係を深めることがなかなか難しいと感じていました。夏休み中は18時頃から活動があるため、作業所の帰りに数回参加しています。体験参加なので、望の関心を知り、先生方の受け入れの様子を見させていただき、いろいろなクラブに参加しています。軽音楽部では演奏を聞いて楽しそうでした。バレー部ではボールが飛んでくるのは苦手なはずですが、嬉しそうに参加し、私は傍に来ないでと言われてしまいました。社会科クラブの校外活動にも参加しました。どのクラブも望は楽しそうです。

その他にも、いろんな集会に参加したり、ルーブル美術館展を観に行ったり、障害者の方々のデモ行進に「エイエイオー!」と叫んで少し参加させてもらったり、例年通り盆踊りで踊ったりと、盛りだくさんの夏です。

ひとこと

高校卒業30周年記念同窓会の案内が届いて、私は久しぶりに帰省をしてきました。当時、若かった恩師は校長になっておられました。田舎の高校だったので、地元に残っている友達の多くは公務員で、小中高の教師や教育委員会の仕事をしている友達も多数いました。「先生」をやっている彼らのどのくらいが「共に育つ教育」を考えているのだろうかと、故郷で望を産んでいたら今の望はあっただろうかと考えると、少し複雑な気持ちでした。


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