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のんちゃん 便り

第70号 2001年11月

8歳になりました

望は、10月に8歳の誕生日を迎えました。誕生日が日曜日だったので、早出残業、休日出勤と忙しくて、望と顔を合わすことの少なかった夫も、この日は自宅にいて、久しぶりに家族でのんびりと過ごしました。誕生日のプレゼントは、リュックサックにしました。前日、私が仕事で梅田まで行ったので、久しぶりに繁華街を歩いて買ってきました。それまで望は、ボランティアの方が作ってくださったリュックやおばあちゃんの作ってくれたリュックを使っていました。手作りの布のリュックもかわいくて良かったのですが、雨だと中まで濡れてしまうため少しの雨でも大丈夫なリュックを買いました。ケーキとプレゼントを前に、うれしそうな望でした。

「1本、2本・・・」と一緒に数えながらケーキにろうそくを立てました。ろうそくの火も、「ふーっ」としっかり消せるようになりました。翌日には、ケーキが食べたくて「ふーっ、ふーっ」と訴えていました。言葉は相変わらずで増えていませんが、伝えたい欲求は強くなり多くなりました。この頃は、PCSという絵カードを使って意思の伝達をしようと試行錯誤しています。「テック/スピーク」というコミュニケーション・エイド(コミュニケーションをとるための道具。望のものは、32個の絵カードが並んでいて、その中から自分の伝えたい絵を押すと録音してある言葉が再生されるもの)を購入し使用しています。もちろん試行錯誤しているのは大人です。望は、自分に必要なものはすぐに覚えて使います。好きこそ物の上手なれは、電動車椅子と一緒です。自分に必要なものはすぐ採用し、必要なければなかなか取り組もうとしない、自分のやりたいことはがんばるけれど、やらされるのはいやと、それが望の性格です。子どもというのは、本来そんなものなのかもしれません。

そして、望の一番大きな成長のもとは、やはり体験です。望は、時々「いろんなことがわかっているように見える」と言われることがありますが、その「いろんなこと」は、体験によって得ているもののように思います。難聴で、知的障害もある望にとって、言葉で話して解ることは少ないです。目で見て、身体で感じることが、成長につながっていきます。私達は望にいろんな体験をさせてきたなあと、ここで自己満足に浸ったりしています。

一方で、友達に意地悪をするようにもなりました。気が強いのはいいことだと思っていたのですが、これは困りものです。誰とでも仲良くではなくて、友達の好き嫌いも出てきました。これも考えようによっては、子どもらしい部分かもしれませんが、いいことと悪いことは教えていかなければなりません。望が善悪を判断するのはまだ難しいところもあり、時間はかかっても周りの大人がしっかり教えていかなければならないと思っています。

いいことや困ったことや、いろんなことを抱えながら、望はいきいきと友達の中で過ごしています。友達の中だからこそいきいきしているのでしょう。周りの子ども達のかかわりも、一緒の時間が長くなるにつれ、自然になってきました。一緒が当たり前になれば、重度の障害をもつ望と一緒に何かをするために工夫が必要になり、考えなければならなくなりますから、その中から学ぶことも多くなります。

望も周りの子ども達もいい状態で来ているのに、現在、行政の方では、変な動きが出ています。「21世紀の特殊教育のあり方について」という報告が、その調査研究協力者会議から出され、それを受けて文部科学省が学校教育法を見直そうとしています。学校教育法施行令を変えようとしているのです。中間報告が出たときには、障害児も一部受け入れるといったような、一見緩和と受取れる内容でしたが、最終報告が出てみると、とんでもない人権侵害がされています。これをもとに改正・施行がされれば、望は学校をやめなければならなくなるかもしれません。ある一面の能力が一定基準以下の子どもは、地域の小中学校への入学を認めないというような内容なのです。

その基準は、誰が何に基づいて決めるのでしょう。一部の人間が、自分のものさしで子どもを分類するなんて怖いことです。そんな中で、子ども達に「平等」を教えることなどできないと思います。人権に関する世界宣言には「親は、子に与える教育の種類を選択する優先的権利を有する」(第26条3)とあるのに、日本は世界に逆行しようとしています。各地で「なぜ、今そんなことが起きるの!子ども達はこんなに輝いているのに」と怒りの声があがっています。望のためにも、多くの障害児のためにも、この報告に基づいた改正がされないようにと願ってやみません。

そんな暗いニュースもあったのですが、人とのつながりが温かな気持ちにしてくれました。導尿で週2日学校に来ていただいている訪問看護ステーションから、望のポラロイド写真が貼ってあるバースディーカードが、利用日に届けられました。また、少し遅れて友人からバースディーカードが届きました。学校から帰って、ポストを見ると望宛の郵便物が入っていました。望に見せて「む・か・い・の・ぞ・み・さ・ま」と字を手で指しながら読んでやると、「ウン」と頷き、「望のだ」と望に渡すと、満足そうに右腕と頬の間にしっかりと持っていました。家に入り、封を開けカードを取り出すのを興味深くじっと見ていました。カードの中もひらがなで書いてあったので、「お・め・で・と・う」と、また手で指しながら読んでやりました。「たのしいこと いーっぱいの1ねんになりますように」というメッセージがありました。望は「ウンウン」と頷きながら見ていました。本当に、楽しい8歳となりますように。

ひとこと

望は、運動会、遠足の疲れが出て、10月末からダウンしました。一生懸命に頑張っていたので、身体に疲れが溜まっているようにみえました。やはりという感じでした。望の心の元気さだけでもっていた10月でした。充分に静養させるようにという医師の言葉に従い、10月末から11月始めにかけて1週間以上も学校を休みました。望は学校に行きたくて機嫌が悪く、自宅で相手をする私は疲れました。学校が大大好きな望です。

望は8歳になり、のんちゃん便りは70号となり、改めて望と私達の暮らした年月を思います。でも、まだまだ8年。これから先を思えば、様々な出来事といろんな思いに満ちた日々がやってくるでしょう。楽しいことも辛いこともみんなしっかり受け止めて暮らしていこうと思います。

身を乗り出して 「ふーっ」

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