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のんちゃん 便り

第148号  2010年2月

一年間を振り返って(学校編)

望が高校受験をしてから、1年近くが経とうとしています。高校の1年間の授業も終わり、あとは期末テストと後期の単位認定を待つだけになりました。欠席は、態変の舞台で1日だけでした。毎日、元気に登校しています。嬉しかったこと、辛かったこと、楽しかったこと、いろんなことがあった1年でした。

受検のことは143号に書きましたが、大阪では障害生徒の「配慮受検」が行われています。けれど、様々な制限があります。中学で定期テストを受けている状態に近い形での受検が可能と聞き、望は中学の先生の介助(代読、椅子の座りなおしや水分補給)で、パソコンを使って解答し、それを教育委員会の先生(あるいは高校の先生)が代筆するという方法を申請しました。受検室の隣室に控え室を準備してもらい、休憩時間に介助の先生が着替えや導尿を行うことができるようにしました。けれど、配慮受検を希望する高校を志願開始前に決めなければならないという制限が大きな壁になりました。知的障害のため点数が取れないので、定員割れを狙おうとしているのに、志願倍率状況を見ながら志願先を決定することができないからです。その厳しい状況の中、本人の頑張りと中学校のサポートと、周りの方々の応援のおかげで、なんとか、夜間定時制単位制の高校に入学することができました。

高校での授業は、小中学の時と同じように友達と同じ普通クラスで受けています。高校には養護学級はないので、抽出される心配はありません。入学すぐから、非常勤講師を含め数名の教師がローテーションで授業の介助に入ってくださいました。後期は、残念ながら、非常勤講師ばかりのローテーションになりました。介助の先生には、望の横にずっと付くのではなく、時々、少し離れて見守って欲しいと伝えました。大人がいると、子ども同士の関係を作るときのバリアになることもあると小中学校で学んできたからです。

高校入学時、障害児教育の知識のある教師がほとんどいないので支援ができるかどうかと言われましたが、私たちは、小中学校でも障害児教育の専門家を求めてきたのではなく、本人や家族と一緒に試行錯誤してくださいと言ってきました。障害児に対し、専門職をつけ、特別な教材や設備を整え、多大な費用をかけるという方法には疑問を感じます。その学校の一生徒として学校生活を送ることができるように、必要なところに必要なものを設置し必要なことを行なう、つまり、合理的な配慮を行えば良いのであって、特別扱いは要らないと思ってきました。

高校では、成績は出席日数や授業態度、テストの点数などを総合的に評価してくださるので、テストで点数のとれない望も、前向きな姿勢や頑張りを認められ単位をもらうことができています。嬉しかったのは、体育の評価でした。望は体育が大好きです。中学までは、準備体操からまじめにして一生懸命に授業を受けていても運動能力で人より劣るために最も低い評価点をもらってきましたが、高校では授業中の前向きな姿勢をちゃんと評価してくださいました。また、後期からは、鉛筆の持てない望に、英語と国語はパソコンを使用して授業を受けるように教科担当の先生が工夫してくださいました。

友達の関係も他の学年や学科の生徒へ広がっています。望がどんどん声をかけて知り合いが増え、「こんにちは」とか「よっ!」とか声をかけあう友達がたくさんできました。特に、夏休みにクラブ参加した軽音楽部やバレーボール部の生徒がよく声をかけてくれます。文化祭ではいろんな友達と過ごしたようです。先生にも積極的に声をかけるので、苦笑いしながら挨拶をしてくださるようになった先生もあります。(教師は率先して挨拶をするだろうと思われるかもしれませんが、これは、高校に限らず、挨拶をしない先生って案外多いのですよ)

車椅子や荷物を持ってもらって知り合いになる生徒もいます。授業前に教室が空くのを一緒に廊下で待ってくれる生徒もいます。人権学習で車椅子の介助などを教えられるのは「だるい」「めんどい」のかもしれませんが、日々の学校生活の中で、「ちょっと手伝ってー」と声をかけると、多くの生徒が嫌な顔一つせず、中には、嬉しそうに手伝ってくれる生徒もいて、そこにあたりまえに居ることの大切さを感じています。高校でも、生徒同士のかかわりに嬉しい発見がたくさんあります。優しくされるばかりではなく、「うるさいなー」と感じている先生や生徒もいるでしょう。現に「コレ()のお世話をするのは嫌」という発言もありました。でも、話し関わっていく中で、言葉が無いから思いを伝えようと大きな声を出したり、(難聴で)聞こえなくて無視をしてしまったり、かかわり方や力かげんがわからないのだと理解してくれるようになる生徒もいます。

時間をかけて関わっていくしかないのですが、いろんな課題もあります。夜間定時制単位制の高校だからでしょうか、体育祭や文化祭の取り組みにあまり時間がかけられていません。中学校では、体育祭の練習などで友達との絆もできてきましたが、望の高校の体育祭は、町内運動会のように飛び込みでも参加できる内容でした。そして、校外学習も少ないのです。クラブ活動が平日は夜9時からなので、体力的にクラブに入るのは難しく、学校の行事でも友達と関わりあう機会が少ないことが残念です。このことに限っては、全日制の高校に入学していたら、行事やクラブを通じて仲間作りができたのにと思います。友達との関係を深めていくことが当面の高校生活の目標です。

そして、最も大きな課題は医療的ケアです。制度だから教師はできないと高校では言われ、それでは検討の余地もなく話し合いにもなりません。前期は毎日私が図書室に待機をしてケアをしていました。後期から看護師資格のある非常勤講師が配置され、週の半分は待機しなくて良くなりましたが、医療従事者(資格のある人)の配置で課題が解決するわけではありません。生活の流れの中にある医療的ケアですから、介助する者がケアできることが必要です。特定の1人しかケアできないという状況は、子どもの生活を制限し、命を危険にさらします。待機する親の負担も大きいですが、それ以上に本人は、高校生にもなって親が学校に居ることで日々プライドを傷つけられ、校内で私を見るたびに「バイバイ!」と言います。小中学校の時のように、親から離れ、1人の生徒として、安心して高校生活を送れる日が来ることを待ち望んでいます。

制度が変わり、教師も医療的ケアができる体制整備がされればと思います。全ての子どもが地域の小中学校で、一緒に育ちあい学びあい、そして、希望する子ども全てが高校へと進学できるようになればと思っています。

(文化祭で)

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