のんちゃん 便り
第35号 1998年 12月 文:向井 裕子
秋からの近況報告
1.遠足に行きました
11月には、望の保育所では2回も遠足がありました。10月に雨で中止になった遠足の代わりに、11日、交通科学館に電車に乗って行きました。エレベータやエスカレータの対応が遅れているK電車(私鉄)とJRを使っての遠足で保母さん方は下見も当日も大変だったと思います。階段をバギーを抱えて降りられたようでした。また、19日は、望が昨年行くことができなかったバス遠足でした。大型バスに乗って、望は、窓から伸びをするように一生懸命見送りのお母さん方を見てうれしそうでした。夫を見つけ(親ばかもいいところ。出勤前に見送りに来ました。)手を振って、それから私を見つけ手を振りました。張りきって出発しましたが、行き先はS海浜水族館で、望の苦手な水族館でした。水槽は見るのもいやだったようですが、イルカのショーは、じーっと見ていましたと保母さんが報告してくださいました。疲れているだろうと、早めに保育所に迎えに行って、すぐに自宅で昼寝をさせましたが、望は、布団の中で何やらずーっとご機嫌でお喋りをして、30分ほどしていきなり眠りました。よほど遠足が楽しかったのでしょう。
2.留置カテーテルがとれました
今年望は、春は体調がよくありませんでしたが、夏からは体調を崩して長期欠席をすることもなく、昨年に比べて保育所にもたくさん通うことができました。ただ、これは7月末からついた留置カテーテルによる感染を防止するために、抗生物質を飲みつづけていたためだと私は思っています。いつも咳の続く秋も、今年は夜に熱を出す程度で長引くこともありませんでした。その留置カテーテルですが、10月頃には腎臓の肥大が治まったため、11月30日にようやくはずすことができました。7月27日から4ヶ月間ついていた尿のパックがなくなり、望はすっきりしました。今年の3分の1は、留置カテーテルをつけていたことになります。これからは、腎臓の状態を見ながら、導尿を行っていくことになりました。現在は、昼間は2時間おき、夜間は3時間おきに導尿をしています。先日、小児科の神経の専門の医師から、夜間に多量の尿が出るのは深く眠っていないためではと指摘されました。以前は、小児科の医師から、尿を濃くする機能がよくないため多量の尿がたまるのではとの指摘もありました。望の膀胱は、たまった尿をうまく排泄できないため腎臓に支障が出てくるのです。これからは、泌尿器科の医師をはじめ、小児科の医師とも相談しながら、様子を見ていきたいと思います。火曜日と水曜日の11時半と13時半には、訪問看護ステーションの看護婦さんが保育所に導尿に来てくださっています。夏にお願いしたときには週3日できるとのことでしたが、需要が増え看護婦の数が足りないとかで、週2日になりました。夜の23時半の導尿は、夫に任せて私は寝ることにしました。それでも夜間と保育所での導尿で私はちょっとばて気味です。重度障害児の在宅福祉サービスを充実させてと叫びたくなります。でも、障害児のことを理解して一番うまく医療的ケアを行っているのは母親である場合が多いようです。私の体力との勝負は、まだまだ続きそうです。
3.望はゆっくり成長しています
さて、親の疲労を露知らず望の方は楽しそうに日々を送っています。仰向けからうつむけへの寝返りしかできなかったのが、手のない左を下にしての方向だけですが、逆も大分できるようになりました。仰向けでも背泳ぎのようにずりずりと動きます。寝返ったりはいずったりと目が離せなくなりました。また、PTの訓練の成果か、小さな左手を意識するようになりました。10月になってようやくランニングから半そでになった望ですが、右手の袖を少し折ってやると、左も折ってと左肩を突き出しました。左手は袖を折ってもすぐ隠れてしまいます。すると「もっとしっかり折って」とばかりに左肩を私に見せます。だんだん自分の体が意識できるようになったのでしょう。右手の動きもますます良くなりました。自分でお茶や牛乳を飲むようになりました。右手をコップの持ち手に入れてやると上手に口に持っていって飲んでいます。たくさん入れると重くなるので3分の1位入れてやるのですが、注いでもらえるのがうれしいようで、もう一杯、もう一杯と要求してきます。また、わずかにねじることもできるようになったので、その動きを使って、来年はスプーンやフォークで食器から食物を取ることができるといいなあと思っています。
それから、挨拶は「バイバイ」と手を振るくらいでしたが、頭を下げて挨拶するようになりました。百貨店で買い物をしたときに「ありがとうございました」と頭を下げた店員さんに、望がペコンと頭を下げたのには笑ってしまいました。でも、まだまだ気まぐれで見慣れぬ人にはプイと横を向いてしまうこともしばしばです。そして、一番の成長は、おしゃぶりなしで眠るようになったことです。「えっ、まだしてたの」と言われそうですが、夜中はまだしていたのです。5歳の誕生日の2日ほど前からいきなり、おしゃぶりなしで眠るようになりました。5歳を自覚したのかどうなのか、あれほど離せなかったのにあっけなく「おしゃぶり離れ」をしてしまいました。眠りが少し深くなったのかもしれません。夜の起き方も少しだけですが少なくなってきたように思います。
4.「のんちゃん便り」のこと
この一年、郵送やインターネットで感想をお送りくださった方々、本当にありがとうございました。「養護学校も地域の学校のひとつ」と教えてくれたのはMさん、「障害児だから不思議な力を持っていると美化するのは危険」「どんな人の命も尊い」と教えてくれたのはYさん。お二人とも重症心身障害児の母です。物事をいろんな角度から見ようと思いながらも一面からしか見ていなかった自分に気づかされ考えさせられました。また、毎月お便りを下さるIさん、心からお礼申します。読んでいるだけの方、お便りくださいね。
特定の人に手紙を書くように望の成長を綴り始めたこの通信も変わってきました。ホームページの開設により多くの人の目に触れるようになりました。先天性四肢障害児父母の会、京都ダウン症児を守る会、全国二分脊椎症児者を守る会のホームページからも「のんちゃん便り」が見えるように(リンク)なりました。でも、私達は、ホームページのリンクの依頼がある度に迷い考えています。他人から見たら意味のないことのようですが、私達は、その度に「障害児」としてではなく「一人の子ども」としての望のプライバシーについて考え、私達の子どもでも私達の付属物ではなく尊い人間である望について考えています。そして、そのことを大切にしたいと思っています。
なんだか慌しい日々を過ごして、もう12月。毎月、月初にこの通信を発行しようと思いながら最近では中旬に発行している有様です。来年は月初発行を目指したいと思います。
よいお年をお迎えください。
音楽に合わせてリボンを振って上手に踊るのよ。