のんちゃん 便り
第48号 2000年 1月 文:向井 裕子
あけまして
おめでとうございます
今年もよろしく
昨年、望は、春には、体調を崩してしばらく安静に過ごしましたが、それ以外は、風邪をひいても長く患う事はなく、保育所に通って日を重ねました。毎日同じ繰り返しのようでも、日々、いろんな出来事がありました。散歩、体操やお遊戯、工作、プール、縄跳び、ドッチボール、缶けり、じゃんけんゲーム、鬼ごっこ、ままごと等、お友達ともたくさん遊びました。給食当番、掃除当番、ウサギ当番、乳児さんを昼寝させる(トントンしてあげる)当番とお当番もがんばっていました。また、生活発表会、遠足、夏祭り、運動会等、保育所での行事もホントに楽しんだ望でした。
この1年で、ずいぶんとシッカリしてきました。身体も丈夫になってきたように思います。永久歯も生え始めました。いろんな感情も芽生えました。お喋りも始めました。楽しい事は保育所にお任せでは、親の立場がありません。家族旅行では、滋賀県にスキーに行き、春先に徳島、淡路島に旅行し、春の終わりに和歌山県白浜アドベンチャーワールドに行きました。夏以降は、遠出をしませんでしたが、シャンテのロックコンサート、ひまわりコンサートや和太鼓のコンサートに行ったり、ジョイスティックカー2号が完成したりと楽しい事がありました。それから、シンクロナイズドスイミングにもチャレンジしました。今年も、また新しい事にチャレンジしようと思っています。そして、春には、ぴかぴかの小学1年生になります。今年も、のんちゃん便りを楽しみにしてください。
1日1日があっという間で、1年が過ぎることがとても早く感じられるということは、私も歳をとってきたということかなと思うこの頃です。小さな頃の1日は、とても長くていろんな事が満ち溢れていたように思います。望の1日1日が、本当に大切な時間なのだと改めて感じています。望は、毎日を楽しそうに過ごしています。「生まれてきて良かったよ」と望の声が聞こえるようです。そんな望の声を「これがぼくらの五体満足」(先天性四肢障害児父母の会編著・三省堂・¥1400)に載せました。100人の元気が詰まった本ができました。
望に限らず、人は皆、「生まれてきて良かった」のだと思います。私が「人生に、ほんの一瞬でもうれしかったり満ち足りた気持ちになる時があれば、それでいい」と思ったのは曾祖母が亡くなった、大学4年の時でした。それなのに、それから10年近くたった時、「一生懸命がんばっているのに、いい仕事も残せない。子どもも残せそうにない。私が死んでも何も残らない。私の人生は何なんだろう」なんて考えるようになりました。そして、望が生まれ、望との暮らしの中で「人生に残すものなんてなくていいんだ。その人がその人なりに精一杯生きて、幸せと思う事があればそれでいいんだ」と思う事ができるようになりました。曾祖母が、生前「骨は海にまいてくれ」と言っていた事を今になってしみじみと思い出しています。10年前も今も一生懸命がんばっていることに違いはありませんが、今は、がんばることが苦ではなくて、がんばりたくて、楽しくがんばっています。1回限りの人生を楽しみたいと思っています。望とともに1日1日を大切に暮らしていきたいと思います。
今年もよろしくお願い申し上げます。
12月には
12月には、餅つきやクリスマス会が保育所でありました。クリスマス会では、区役所の健康福祉サービス課の男性がサンタクロースになって訪問してくださったようです。「2年前に来た時は、望ちゃんに泣かれて…」と心配そうにいらしたそうですが、望は、サンタさんに「こんにちは」をして抱っこしてもらったようでした。望が保育所で成長した様子、保育所に入って良かった事、区役所の方にもよくわかっていただけたと思います。
プライベートでもうれしい事がありました。望の食器ができたのです。さかいまゆこさんという陶芸家の方が作ってくださいました。桜の頃に彼女の陶展を見に行った私は、その温かな作品に心ひかれました。望がスプーンですくいやすい食器を探していた頃でした。老人向けの食器は、店頭でも見かけるようになりましたが、大きいし、なんといっても可愛くないのです。それに望にとっては使い勝手もいまいちと見ただけでわかります。望に小ぶりで可愛い食器があったらと思っていました。それが実現したのです。まゆこさんは、クリスマス前に6個の食器を持ってきてくださいました。その中から3個をいただきました。望が右手に付けたスプーンですくいやすいように工夫してあります。早速1個は、給食用に保育所に持って行きました。素敵なクリスマスプレゼントです。望より、私がうれしくてうれしくて、眺めたり触ったりしています。もちろん、望は、この食器で食べる練習を始めました。使いよいよう改良していきたいと言っていただき、感謝、感謝です。
25日の夕食時には、親子3人で手作りのささやかなクリスマスをしました。
ひとこと
昨年、ジャーナリストの斎藤茂男氏、大阪府立大学社会福祉学部の定籐丈弘氏が亡くなられました。斎藤さんは、初めて望を見られた時、この子は可愛い顔をしていると言ってくださいました。まだまだお話ししたい事がたくさんありました。定籐先生は、いつかお話しを聞きたいとずっと思っていた方でしたが、一度もお会いしないままでした。先日、注文していた「障害者の機会平等と自立生活 定籐丈弘その福祉の世界」(明石書店)が届きました。心よりご冥福をお祈り申します。
コンピュータ2000年問題はどうなっているでしょうか。皆さんが、暖かな明るい部屋でお茶でも飲みながら、これを読んでいらっしゃる事を願っています。この2000年に夫と私は、40歳になります。いきなり介護保険の被保険者です。今年はどんな年になるでしょうか。よい年となりますように。
ブルーの方には、音符の模様が入っています。
フーッ。吹くのも上手になったよ。