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のんちゃん 便り

第64号 2001年5月

遠足大好き

4月20日は遠足でした。『おそと』が好きな望は、もちろん遠足が大好きです。前夜にリュックを見せると、望は、「明日」が理解できないので、『行こう。今、行こう』と訴えます。「あした」と言っても納得できません。リュックは玄関に置き、「あした、あした、ね」と、なだめて就寝させました。

遠足当日は、いいお天気でした。望は、朝、お弁当を見つけ、リュックと赤白帽を見て、大喜びです。遠足、運動会、体育と、望の好きなものには、赤白帽がつきものです。ですから、望は赤白帽が大好きです。体操服も大好きなのです。洗濯して干してある体操服を見つけると、体操服を着れば楽しいことが始まるとでも思うのか、『着る、着る』と訴えます。今回の遠足は体操服ではありませんでしたが、「弁当」「リュック」「赤白帽」で、状況はバッチリわかったようです。望は、「遠足」という言葉はわからないかもしれませんが、楽しいことが待っていることは、充分にわかっています。『赤白帽かぶって、早く行こう』と朝食中も気はそぞろでした。

朝食が終わり、歯磨き、排便をして、車椅子に乗って、さあ学校へ出発です。玄関を出た時から、右腕をグルグル振りまわして、はりきっていました。介助をしてくださる先生に、リュックの中の着替えや導尿の道具について説明をして、お願いをしました。汗かきの望は、たくさんの着替えが必要で、水分をたくさん採るので、大きな水筒も必要です。導尿の道具も要ります。友達より大きなリュックになります。その大きなリュックは、車椅子にかけます。そして、弁当とおやつを小さなリュックに入れます。友達と同じことをしたがる望は、両肩にその小さなリュックの紐をかけ、胸のところにリュックを持ってうきうきしています。しばらくして、「もう重いからカゴに入れておこうか」と聞くと、望がうなずいたので、車椅子の前カゴにリュックを入れました。うれしそうに出発していきました。

自宅の玄関を出発した時から、望は、張り切っていたのですが、学校を出発してからも、電車の中でも、大きな声を出して興奮していたようでした。目的地でも、元気に遊んだようでした。朝から、がんばり過ぎて、お弁当の頃には、疲れが出たようで、弁当を食べ始めると、うとうとし始めて眠ってしまったとのことでした。療育センターに通っていた頃、望は、いつも昼食時には眠くなっていたものでした。あの頃に比べると、ずいぶん元気になりました。残ったお弁当を見ながら、私は懐かしく思い出しました。

先生が、「お母さん、ごめんなさい。お弁当をほとんど食べずに寝てしまいました」とおっしゃいました。確かに空っぽの弁当箱を見るとうれしいです。朝早くから起きて作ったお弁当です。でも、弁当が残ったからといって、ガックリはしません。私は、できる限りの準備をしてやりたいと思っています。無駄になる準備もあっていいのです。見返りなど期待していないのです。元気に楽しく、友達と一緒に遠足に行ってきてくれただけで、充分にうれしいと思っています。

2年生最初の参観日

4月27日(金)に、2年生になって最初の参観日がありました。授業は、国語で、音読でした。子ども達1人1人が順番に前に出て、自分の決めた箇所を読みます。1年生の授業参観では、望は、先生の方を見て、話を聞いているかのように静かにしていて、グループで何かをする時には大きな声を出してと、その場の状況にあった態度を取っていました。でも、この頃、望は、パワーアップして、よく大きな声を出しているので、授業参観中に、静かに友達の音読を聞くことができるだろうかと心配でした。

参観が始まった途端に、案の定、望は大きな声を出しました。その日の望担当の先生が「しーっ」と注意してくださったのですが、効果なしでした。前に出ている友達を呼んだり、担任の先生を呼んだりして、声を出しています。かつて、本の字を追いながら読むことを面白そうにした時期もありましたが、最近は、宿題の音読も途中でいやになる望です。よくわからない字を目で追って、よく聞こえない音読を聞くことが、望にとっては、よく意味の解らないもので、苦痛なのかもしれません。自分の番になって、友達とうれしそうに前に出ました。ところが、友達が読み始めると、横を向いたり寝たふりをしたりで、しっかりと拒否の態度です。自分の番が終わって席に戻ると、また、声を出していました。望と目が合った時、私は、人差し指を口に当てて「しーっ」と合図を送ったのですが、望は、目をそらして無視をしました。私は、他のお母さん方に申し訳ないような気がして、先生にもご迷惑をかけているように思って、ため息が出ました。

でも、周りを見渡せば、静かにじっとしていられない子は、望だけではありませんでした。「他の子が退屈なら、望はもっと退屈だ」と思ったら、ちょっとホッとしました。そうしたら、「望、静かに!」とばかり思っていた私の心に、いろんな考えが浮かびました。望は、うるさくて授業の邪魔や友達に迷惑をかけることもあるだろうけれど、「いい時だけ、優しくしてあげて、一緒に過ごしてあげる」のではなく、「良い時も悪い時も、いつも一緒にいる」ことが、子ども達にとって大切なことなのだと思いました。そして、望には、時に「我慢させる」ことも必要ですし、時に「他の方法を与える」ことも必要だと思いました。他の方法というのは、その場でできる何かがきっとあると思いました。その方法は、まだ私にも解りません。2年生は始まったばかりです。先生方に考えて対応していただこうと思います。

参観の後で、クラス懇談がありました。担任の先生が、「いつも望が一緒であること」「良い友達関係を作っていきたいこと」を話されました。私も、他のお母さん方に、少し望のことをお話ししようと思ったのですが、お母さん達からの発言が「宿題の出し方」のことや「掛け算を習う時期」のことだったので、なんとなく、手を上げそびれてしまいました。「望の存在」が「勉強の邪魔だけ」になりませんようにと、ちょっと気弱になってしまいました。

でも、翌週、望の周りの子ども達を見ていたら、「きっと良いこともあるだろう」と思うことができて元気になりました。次の参観を楽しみにしたいと思います。

ひとこと

毎日が過ぎるのが速くて、毎月の発行が遅れつつあります。先月は、あまりの遅れに、心配してくださった方がありました。ありがとうございました。わたし達は、元気です。

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