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のんちゃん 便り

第83号 2003年1月号

あけましておめでとうございます

 昨年は、お世話になり

ありがとうございました。

本年が良い年となりますように。

望のカルテ

平成8年10月、望の3歳の誕生日頃から、「望のカルテ」を始めました。B6サイズの小さな大学ノートです。望が出生時から通っている大学病院は、当時、カルテが診察科毎に分かれていました。小児科、外科、脳外科、泌尿器科など、多くの科で診察を受けていましたが、他の科でどういう診断が行われているのかが、それぞれの医師に分からないという状況でした。多分、分からなくても診察に大きな影響はなく、必要な時に他の科の医師に聞いて連携をとればすむのでしょう。でも、診察に行く科毎に「小児科でこう言われました」などと、私の不確かな用語で報告することが、ちょっと辛かったのです。それに、親である私が診察内容や薬の種類や量を知っておく必要もあると思いました。

大学ノートの表紙に、マジックで「望のカルテ」と書いて、最初に小児科の診察の時に、「先生、メモ書きで結構ですのでお願いします」と差し出しました。望が出生時から診ていただいている医師です。風邪の症状が出ている時でした。医師は、快く書いてくださいました。3種類の薬が出ていて、1回量と何日分出したかと、①の薬は、「ゼーゼーの時」と注意書きもして下さいました。その頃は、薬の詳細な説明書きが薬局から出されていませんでした。私は、薬の名前や、望が飲みやすい薬や嫌いな薬がどれか、どの抗生剤が下痢を起こしやすいかなどをこのカルテで知ることができました。最近、医療ミスの報道が多くありますが、このカルテがあれば、私も診察内容を知ることができますし、医師の指示通り薬が出されているかのチェックもできます。また、医師もカルテの書き換えなどはできないと思います。でも、「望のカルテ」は、医師に不信感を持って書いてもらっているのではなく、医師と私の信頼関係のもとで、医師の好意によって書かれているものです。

外科でも脳外科でも泌尿器科でも、快く書いてくださいました。他の病院でも、たいていは嫌な顔をされることなく書いてくださいます。血液検査や尿検査の結果の表、時には腎臓のエコーの写真なども貼ってあります。「望のカルテ」を診察に持っていくのを忘れた時の診察内容を書いてもらったメモも貼ってあります。ページを繰れば、いつ体調を崩したか、いつの定期検診でどういう診断をされたかが思い出されます。

望は、2学期、1日も休むことなく学校に通いました。12月になって、少し疲れがみえ、鼻詰まりや声が変になったりしましたが、下校後、昼寝をさせて、栄養をとってゆっくり身体を休ませ、なんとか2学期を終えました。「望のカルテ」も7月中旬から、毎月行く泌尿器科の記録だけが続いています。泌尿器科の医師が、「これは何冊目になりましたか?」と聞かれました。「1冊目です」と私は答えました。『まだ1冊目ですか』『ハイ、まだ1冊目です』と目で会話したように思いました。「元気になりましたねぇ」と医師がおっしゃいました。6年間で1冊は、多いのか少ないのか。診察のたびに数行書かれるだけですから、決して少なくはないでしょう。でも確かに病院に通う日は少なくなりました。

現在、望は、体調を崩した時には、近くの小児病院に行っており、定期通院で総合病院に通っているのは、神経因性膀胱のために月1回行く泌尿器科くらいになりました。その他は、外科と脳外科に年1回。診察曜日が同じなので、1日ですむようにしています。小児(神経)科に年1、2回。難聴のため聴力検査で耳鼻咽喉科に年2回程度。眼科は、昨年の夏に病院を変え、近視と言われたこともあり、また春休みに行く予定ですが、それまでは年1回の通院でした。

病院は、「治療する」場だけでなく、患者の「生活を支える」場でもあると、私は思ってきました。私は、望に学校を休ませて定期検診に行くことはしていません。年に1、2回の通院は、なるべく長期休みに行くように予約を入れています。毎月行く泌尿器科は、学校が終ってから行けるように、毎回こちらの都合を聞いて予約を入れてくださいます。日常生活に支障のないよう通院をしています。それができなかったので、眼科を市立病院から大学病院に変えました。あとの診察科は、年に1、2回の診察ですから、1ヶ月や2ヶ月ずれようが、長期休みに行くことを認めてくれています。「生活を支える」ということは「生活の質」を向上させるということです。その医療が、患者の日常生活を考慮することなく、医師や病院の都合のみで通院をさせるのはおかしいと、私は思っています。

生活を支える医療の1つに、常時医療から切り離せない症状にある人が自宅で生活できるようにと、医師の指導のもと、医療者でない者も行うことができる医療的ケアといわれるものがあります。望の場合、自己導尿がそうです。導尿を医療者だけがする行為とされていたら、望は、病院で暮らさなければなりません。自宅で地域でいきいきと育っている、今の望はないわけです。月1回泌尿器科に行き、週2回訪問看護婦を頼み、あとは介護者がケアをし、ケアできる人がいない時は、近くの小児病院で対応してもらって、望の「日常」は成り立ってきました。

1冊目の残りのページが少なくなった「望のカルテ」を見ながら、いかに望が、医師との信頼関係のもとで、医療関係者との連携の中で、育ってきたかを思っています。言いたい放題の「のんちゃんの母」を受けとめてくださった医療関係者の方々に改めて感謝しています。そして、望と私たちのゆっくりの成長を見守ってくださっている皆さんに、心から感謝を申し上げます。

今年もよろしくお願い申し上げます。

ひとこと

望の体重は、12kgを越えました。「望のカルテ」の最初のページには「7485g」と書かれています。今年は4年生になります。小学校生活も半分終わります。

昨年は、夫と私は、なんだか慌しい1年でした。望だけが、マイペースに生活を楽しんだようです。反省しつつ、ゆっくりのお正月をと思っています。そういえば、昨年も、望としっかりゆっくり向き合える正月をと思っていたような気がします。

夫は、相変わらず仕事に忙しい日々でした。そんな中、PTAの広報委員会、先天性四肢障害児父母の会、マンションの自治会とさまざまな活動に寝る暇もない状態でした。今年の目標は、健康管理です。私は、新しい一歩を踏み出そうかどうかと思案中です。ステップの年にしたいと思っています。



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