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のんちゃん 便り

第88号  2003年 6月

支援費制度利用開始

望が2歳の頃、療育施設への母子通園の疲労と、継続睡眠のとれない望の介護による慢性の睡眠不足をかかえて、私は疲れきっていました。親も親戚も近くにはおらず、出産直後から、会社員の夫と2人で望を育ててきました。体力の限界を感じ、区役所に行き居宅介護の制度について尋ねました。でも、その当時、障害児の家庭は、ホームヘルパー派遣の対象になっていませんでしたので、望の遊び相手として、ボランティアの方に来ていただくようにしました。それは、地域や人とのつながりとか、いろんな人に望を託すという意味ではとても良かったのですが、制度としてのサービス提供が必要だと思いました。

その後、障害児の家庭にもホームヘルパーの派遣がされるようになりましたが、望は、すでに保育所や学校に通っていて、私の慢性睡眠不足はあいかわらずでしたが、利用しなくてもなんとか生活できていました。今まで定期的に利用してきたサービスは、導尿のための訪問看護くらいでした。私は、3年程前から仕事を始めましたが、望が学校に行っている間にできるものだけを引き受けるようにしてきました。でも、昨年あたりから、夕方からの仕事の依頼や会議が増えてきました。一泊の仕事や打ち合わせも出てきました。最初は断わっていたのですが、そうもいかなくなり、夕方からボランティアさんにお世話になり、夫が早くに仕事を切り上げて帰宅するようにして、四苦八苦してやってきました。

この春、支援費制度がスタートしました。我が家も支援費制度を利用することにしました。「措置」から「契約」へといわれるこの制度は、障害者福祉サービスについて、利用者の立場に立った制度を構築するために、今までの「行政がサービスの内容やその提供事業者を決定してきた『措置制度』」から、「障害者の自己決定を尊重し、利用者本位のサービス提供を基本として、利用者が選択し、提供事業者との契約によりサービスを利用するという仕組み(支援費制度)」にするというものです。「なんのこっちゃ?」と思われる方もあるでしょう。うたい文句はいいけれど、需要を満たすサービス提供が確保できないだろうと思われる方もあるでしょう。

開始前から、いろいろと問題のあった制度ですが、介護保険ほど対象者が多くないこともあってか国民の関心も薄く、マスコミに取り上げられることも少なかったので、我が家の場合を簡単にご紹介します。まず、区役所に支援費制度の申請に行き、「聴き取り」を受けました。基本的には本人が申請に行くのですが、望は話せませんから親である私が行きました。でも「障害者の自己決定を尊重する」制度ですから、望と一緒に行きました。この「聴き取り」では、障害の種類や程度、日常生活を営むのに支障を来している状況、生活環境、介護者の状況、利用するサービスの内容や利用目的、実際に利用できる見込みなどを聞かれます。我が家の場合、自宅では、平日の介護はほとんど私1人で、望が常時介助の必要な子どもだからか、スムーズに終わりました。障害児は、ホームヘルプサービス、ディサービス、ショートスティが利用できます。我が家は、ホームヘルプサービスとディサービスを申請しました。申請が認められると、それぞれのサービスの「支給量(月に何時間利用できるかの範囲、翌月への繰越や他のサービスへ振替はできない)」が決まり、利用できるサービスと支給量、利用者の負担額が記されている「受給者証」が交付されます。支給期間は1年です。4月1日に申請し、4月末に「受給者証」と事業者一覧表が送られてきました。利用開始は5月からでした。

事業者の一覧表だけを見ても、どの程度の供給をしてくれるのか、どういった事業者かなどは、全くわかりません。支援費が始まって、初めてサービスを利用する人は、いったいどの事業者と契約すればいいのか困惑すると思います。私は、一覧表の中に、以前、望に関わったことのある方が管理者をしているヘルパー派遣事業者をたまたま見つけ、電話をしました。介護保険の事業者をしてきて、今回、支援費制度の事業者としても登録したそうです。望が支援費1号とのことで、「のんちゃん、大きくなったでしょうね」と懐かしがられました。その事業者とホームヘルプサービスの契約をしました。ディサービスの方は、近くにある重度障害児の学童保育をしている福祉作業所が、夕方からのディサービスをはじめたと聞いていたので、一覧表にあることを確認して契約をしました。

ホームヘルプサービスもディサービスも、望はヘルパーさんとすぐに仲よくなり、楽しそうに過ごしています。ヘルパーさん達もすぐに望の介助に慣れてくださっています。実際にどのくらいの供給が見込めるのか、どの程度利用できるのかも解らなかったので、かなり少なく申請してしまいました。近いうちに利用時間を申請しなおそうと思っています。

これで、学校、いきいき教室(学校の空き教室を使った児童放課後事業、長期休み中もあります)、ホームヘルプサービス、ディサービス、いざという時の近くの病院での一時預かりと、望の生活と介護の体制が整いました。でも、それらを有効に利用することはできていません。それは、望の体力と導尿の問題があるからです。私は今だ雇用される状態ではありません。週1日行っていたバイトも続けられずに、2年半で、この春辞めました。望は、よく熱を出して、早退や欠席もしますし、病院にも行きます。そして、毎年春には、導尿のために、私が学校に通わなければなりません。望は、元気な時でも昼寝が必要な子どもです。1日のうちの半分以上睡眠をとり、自宅で休養することにより、元気に毎日を過ごすことができているのです。私は、望の体調を整えることに気の抜けない日々です。下校後、ホームヘルパーさんに昼寝や休養をさせてもらえば良いのですが、導尿の問題がありますので、2時間以上は頼めません。また望は、よほど体調が悪い時以外は、他の人と一緒だと張り切ってしまって、休養どころではないのです。

この望の体力と医療の問題は、簡単に解決できるものではありません。時間をかけて、望に合わせていくしかありません。思い通りにはならないのが育児です。私も、望の体力を見ながら、できる範囲でできる仕事や活動をしていこうと思っています。

ひとこと

今月は、やたらカッコの多い読み辛い文章になってしまいました。5月下旬からバタバタの日々で、今月は発行も遅くなりました。申し訳ございません。望は、暑さで体力が落ち、1日欠席しましたが、がんばって登校しています。私も元気にしています。ご心配くださった方々、ありがとうございました。

4年生になってクラブ活動が始まりました。
なんと、望は「パソコンクラブ」です。

 

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