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のんちゃん 便り

第94号 2004年1月号

ジャンプ

「はやいもので」と昨年最後の号に書きましたが、今年、予定通りに続けられれば、望が2歳過ぎから始めた「のんちゃん便り」は8年を経過して100号を達成することになりますし、あっという間に年月が過ぎていくように感じています。けれど、昨年1年間のこの通信を振り返ってみれば、望の時間は、ゆっくりと確かに流れ、私も多くのことを感じ考えさせられた1年だったことがわかります。望は、クラスの中にますますしっかりと存在し、いろんなことに興味を示し、感情もその表現も豊かになってきました。一方、私は制度や行政の体制に対する疑問をたくさん持ち、地域で豊かに暮らすにはどうすればよいのかを考えてきました。「いのち」や「こころ」について考えさせられました。「自立」についても意識をした年でした。

望は、4年生になり、あいかわらず朝起きると「ガッコ」と言うほど学校と友達が大好きで、いい友達に恵まれて楽しい1年を過ごしました。パソコンクラブにも入りました。通信簿の3段階評価だけを見れば、「C」に変わりはありません。普通の子どもの能力を基準にした成績表ですから、それは仕方のないことです。「特徴」の部分では、各教科とも関心・意欲のところに○が付いています。勉強への関心も少しずつですが出てきました。先生方の文章には、自分のしたいことをはっきりと主張し、身体表現と様々な声など多彩な表現方法で、周りへ働きかけたり感情を表現したりするようすが書かれていて、望の成長がわかります。友達とのコミュニケーションも良くなってきました。また、音楽に興味を示し、ピアノを始めました。私が抱っこして先生の隣に座り、連弾のような形で行ないます。腕の稼動範囲が小さいので、鍵盤に腕をもって行けるよう私が望の身体を動かします。月1回程度の取り組みですが、リズム感がよくて、音の高低を理解し、予想以上に上手く弾くことができています。そして、先生と音の真似をしあって、音楽でコミュニケーションをとったりもします。生活の楽しみになればと思っています。余暇では他に、スキーやカヌーに行ったり、新幹線や電車で遠出もしました。プールも「ア、ア、ンッ」(1,2,3と潜るときのかけ声で表現)と言って行きたがりました。学校のプールは皆勤で入水し、障害者プールのシンクロにも時々参加しました。電動車椅子も自由自在です。いきいきと、未来に向かういのちのまぶしいほどの輝きを感じさせます。

今年も、ワクワクドキドキのチャレンジがあるでしょう。今、スキーのチェア(座位保持椅子)を作ってもらっています。板の上にくくりつけられてジェットコースターに乗るように滑るだけでなく、自分の身体を使って滑ることができるかもしれないと楽しみにしています。近々お披露目できると思います。スキーの楽しみも広がりそうです。また、年末には、障害者スポーツセンターに電動車椅子サッカーのことを聞きに行きました。電動車椅子を使って、自分の力で参加するスポーツができればとずっと考えていました。過激なスポーツなので、子どもが入れるかどうかやってみなければわかりませんが、今年はチャレンジしようと思っています。「できなければならない」とは思っていませんが、「できる」ことや「役割を得る」ことは、主体性を育み、本人の喜びも大きく気持ちが前向きになります。今年もいろんな体験をし、望自身が選択や決定をする機会を増やしていきたいと思います。また、言葉のほとんど無い望ですから、コミュニケーションの手段も確立していかなければと考えています。自己主張が強く「伝えたい思い」をたくさん持っている子どもですから、色んな表現方法で伝えようとしてきます。でも、哀しいことに親である私でさえも、その思いを理解できない時があります。周りが理解しようと努力することはもちろんですが、望自身が、伝える術を持つことも必要だと思っています。その手段を工夫していこうと思います。望が自由に思いを表現できるようになったら、「お母さんはとっても勝手で、お父さんとよくけんかをします」なんて言われそうで、私はちょっと怖い気もしますが、望自身が、思いを語り、自分の人生を選び取っていくために、望の持っている能力に気づき、それを使うことができるようにすることも、親の役割なのだろうと思います。これも楽しみながら試行錯誤していきたいと思っています。

望と暮らしているおかげで、私は、昨年もたくさんの方々に出会い、多くの思いを受け取り、自分の心を見つめなおしてきました。その出会いを幸せに思い、受けとめた思いを心に刻み、1年を振り返りました。人のつながりの大切さを再確認した1年でもありました。保育所や保育士さんへの講座では、「ありのままの子どもを受け容れる」という内容を求められることが多くありました。そのことを話しながら、改めて、そのままでかけがえのない存在である望を想い、ありのままで受け容れられることが、子どもの心の栄養となることを感じました。そしてまた、「親である自分」「親でしかない自分」を客観的に見つめることができたように思います。弱くてゆらいでばかりいる私をありのままに受け入れ支えてくれた、尊敬する大切な友人達に心から感謝しています。望を産んで、福祉のことを学び始めて10年が経とうとしています。望を産むまでの会社員生活が10年半ですから、今年の終わりにはこの道の方が長くなります。10年といえば、ベテランです。とてもベテランの範疇には入れそうにありませんが、そろそろ次の目標に向かって行こうと思います。昨年まで充電してきた思いを、今年は行動に移します。行政にはできない1人ひとりに向き合った、人と人との温かなつながりの中での地域生活支援を行なおうとしています。望が親離れしていくのと同時に、私も子離れの準備をしていこうと思います。1人ではできないことも仲間と一緒ならきっとできると思っています。春に改めてご報告をします。その時には、どうぞみなさまのご指導ご協力をよろしくお願い申し上げます。

そして、最近、のんちゃん便りにあまり登場しなくなった仕事に追われて疲れ気味の夫は、会社の組織が変わり、新年から新しい体制のもとで仕事をします。仕事以外でも、新しい資格を取ろうと昨年末に行動を始めました。それは、やはり望との暮らしから気づき教えられたことだと思います。

新年を迎え、我が家は、それぞれの想いの実現に向けて新しいスタートをします。道は、たやすくはないと思いますが、プラス思考でジャンプしようと思います。今年も楽しくやっていきます。

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。


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